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においについて

嗅覚とにおい物質

ヒトの五感のうち、視覚・聴覚・触覚は物理的感覚、味覚と嗅覚は化学物質がヒトの舌上あるいは嗅鼻腔に達して、はじめて感覚が発生することから、化学感覚(chemical senses)といわれています。
それでは、このにおいを感じさせる物質はどのくらいあるかというと、20万種とも40万種ともいわれていますが、最もにおい化合物を多く扱っている香料産業でも汎用するものは800種くらいであり、時々用いるものを含めても5,000種くらいと推定しています。

1.においを感じる仕組み

においは目には見えませんが、私たちは「におい分子」を鼻のなかの嗅上皮の嗅神経細胞に存在するにおいを感知するセンサー(嗅覚受容体タンパク質)で受け取っています。受け取ったにおいをセンサーが検知し、嗅球に科学信号を送ります。嗅球は送られた科学信号を情報処理し、電気信号に変換し、脳へと伝達します。
つまり、化学物質であるにおいが脳まで到達して感じるのではなく、鼻のなかでにおいの化学信号が電気信号に変換されて、それが脳に伝わって感じるのです。また、においのセンサーは、ヒトで約400種類。味覚のセンサー(約30個)に比べ、圧倒的に多く、感度も高いのでなんのにおいであるかを認知する事が出来るのです。

においを感じる仕組み

2.におい物質

濃度について

におい物質が空気中に蒸散したにおいという状態の濃度を表すには、ppm(百万分の一)の単位がよく用いられます。

閾値について

検知閾値:何のにおいか分からないが、においの存在を感知できる最少濃度
認知閾値:何のにおいか具体的に識別できる最小濃度

ウェーバー・フェヒナーの法則

におい物質の濃度と人間の感覚量との間には、ウェーバー・フェヒナーの法則があります。この法則は人間の感覚量は物質濃度の対数に比例するというもので、物質濃度が10倍になっても人間の感覚ではおよそ2倍程度にしか感じないことを表しています。反対に90%臭気を除去しても、人間の感覚ではせいぜい半分程度にしか減少したように感じられません。このことが悪臭対策の難しさに関係しています。

ウェーバー・フェヒナーの法則

3.においの感じ方

においの感じ方は、マスキング、変調、加齢、男女差などによって違ってきます。

マスキングと変調

マスキング

快香を悪臭よりも強く流すことにより、快香は感じるが悪臭の感じ方が変わること。これは、悪臭物質がなくなったわけではなく、感覚的にそう感じるので、感覚的消臭という言葉が用いられることもあります。(トイレの芳香剤等)

変調

におい同士の混合により全く別のにおいに感じたり、においのニュアンスが変わったりすること。(香水やコーラ飲料などの調合香料)

加齢とにおいの感じ方

嗅覚も他の感覚と同じく加齢になるに従って、その能力は低下することは事実ですが、老眼や耳の遠くなる現象ほどには個人個人は自覚していなく、あまり不便も感じていないのが実情です。

その他、男女差(統計的には女性のほうが嗅力は上といわれている)や喫煙者(非喫煙者よりにおいを弱く感じる)など、個人差があります。

4.嗅覚の特徴

順応(自己順応)

あるにおい物質を持続的に嗅いでいると、そのにおい物質に対する感度が変化します。一般的には、におい呈示時間に応じて減衰していく現象のこと。四六時中嗅いでいる自分の体臭や口臭は自分ではほとんど感じないか、たまに感じる程度ですが他人にはよく感じられます。

嗅盲

多くのにおいに対しては正常な嗅力を有しているのに、ある特定のにおいのみ感じていないか、あるいは弱くしか感じないこと。

においの嗜好

人によって好きなにおい嫌いなにおいがあります。においに対する嗜好は後天的要因の影響を強く受けると言われています。特に幼少期の食習慣や食体験という学習効果が最も大きな影響を与えています。また外部からの情報もにおいの嗜好に影響を与えています。安全性や安定性も嗜好に大きく関わってきます。多くの人が選択するものは、好きの方向に揺れるし、経済性の判断も入ります。

においの役割

食について

我々は、日常の生活の中で食べ物を口の中に入れる前に、まずそのにおいを嗅いでから食べることがしばしばあります。これは、その食べ物が変なにおいがしていないかを確認するしぐさであるといえます。すなわち、そのものが自己にとって害になる食べ物であるか否かをチェックしているのです。

情報伝達について

情報伝達物質のもっとも代表的なものは、フェロモンです。フェロモンは動物の体から放出され、同種のほかの個体に特定の行動や生理的過程を引き起こす化学物質ということになります。

フェロモンの分類

触発フェロモン

性(異性の放出したにおいで、異性を見つける)
集合(同類の仲間が集まる。ゴキブリ等)
警報(外敵に襲われた時仲間に知らせる。ハチやアリ等)
道しるべ(餌場から巣へのしるしを地面につける。アリ等)
縄張り(自分のテリトリーを同種の仲間に示す。犬等)

誘導フェロモン

女王物質
(働きバチとしての行動を起こすようにするよう働く。女王バチ)

臭気の嗅覚測定法

臭気の数値化

悪臭の規制を実施したり、脱臭対策の検討を行うなど、臭気に対するあらゆる取扱いをする場合に、ある評価尺度で臭気を数値化することが必要になります。しかし多種多様の特徴を有する臭気を、たった一つの評価尺度で表すことは非常に難しいことですので、数値化の目的に合った評価尺度により測定を行うことが必要です。

臭気の主な測定方法は、以下に示すように、大きくは2つの方法に分けられます。1つはそのにおいを構成している化学物質に着目し、その濃度で表示する「成分濃度表示法」であり、もう一つは人間の嗅覚を用いて臭気を数値化する「嗅覚測定法」です。

臭気の数値化フロー

成分濃度表示法

単一成分濃度表示法

ガスクロマトグラフィ・分光光度計などの分析器を用い、臭気を構成している化学物質の濃度で表示(数値化)する方法です。この方法は分析する臭気の成分が特定されている場合には有効ですが、成分が特定されていない場合や多成分により構成されている場合には適していません。また分析に要する費用も高く、専門的な知識も必要です。

複合成分濃度表示法

1つの臭気が多成分で構成される場合、単一成分ではなく、その中にあるグループの濃度で捉えようとするもの。(S化合物、炭化水素、硫黄化合物など)

臭気官能試験法

臭気強度表示法

人の嗅覚でにおいの強さを数値化する方法です。4段階あるいは5段階臭気強度表示法などもありますが、日本では6段階臭気強度表示法が広く使われています。また、悪臭防止法における第1号規制基準値は、22物質それぞれ6段階臭気強度表示法における2.5と3.5に対する濃度の幅の中で決められています。

0 無臭
1 やっと感知出来るニオイ(検知閾値)
2 何のニオイであるかわかる弱いニオイ(認知閾値)
3 楽に感知出来るニオイ
4 強いニオイ
5 強烈なニオイ

快・不快度表示法

においの快・不快度に着目して数値化する方法です。
日本においては9段階快・不快度表示法が広く使われています。被害の実態を比較的表しやすいという点で最も重要な、かつ基本的な評価尺度です。
快・不快を決定付ける因子は、個々人の生物学的特性(年齢、性別など)や社会学的特性(経験、学習など)により影響を受けます。また、同一人物でも、においを嗅いでいる時間などの影響を受けるため、普遍性のある客観的評価を得にくくなります。

-4 極端に不快
-3 非常に不快
-2 不快
-1 やや不快
0 快でも不快でもない
1 やや快
2
3 非常に快
4 極端に快

臭気指数(濃度)表示法

「臭気濃度」とは、単に臭気の濃度という意味ではなく、ニオイ(原臭)を「無臭の清浄な空気で希釈したとき、ちょうど無臭に至るまでに要した希釈倍数」と定義されています。仮に臭気濃度100とは、そのニオイ(原臭)を無臭の清浄な空気で100倍に希釈するとニオイがなくなるということを意味します。 また、ひとの嗅覚の感覚量に、より対応した尺度として臭気指数という尺度があります。これは臭気濃度の常用対数を10倍した値で表します。これらの臭気濃度や臭気指数の測定には三点比較式臭袋法が用いられています。この三点比較式臭袋法による臭気濃度及び臭気指数の測定は、臭気判定士が行います。

臭気濃度と臭気指数の関係 臭気指数 = 10 × log臭気濃度

臭気濃度 0.1 1 3 10 30 100 300
臭気指数 -10 0 5 10 15 20 25
臭気濃度 1000 3000 10000 30000 100000 300000 1000000
臭気指数 30 35 40 45 50 55 60

臭気頻度表示法

ニオイを感じる頻度を表示する方法です。臭気強度表示法、快・不快度表示法、臭気濃度表示法と比較し、より長期的なレベルでの評価時に用います。

0 いつまでもにおわない
1 たまににおう(月に1回程度)
2 ときどきにおう(週1回程度)
3 しょっ中におう(日に1回程度)
4 いつでもにおっている

悪臭防止法

規制基準:工場や事業場の敷地境界、排出口、排水口について規制されています。

悪臭防止法

規制内容:臭気強度2.5~3.5に相当する特定悪臭物質の濃度または臭気指数の範囲内で規制されています。
また、これらを同時に適用することはできず、特定悪臭物質規制か臭気指数規制のどちらかの規制になります。

※臭気強度と臭気濃度の関係
臭気強度2.5に対応する臭気濃度は、概ね10(臭気指数10)
臭気強度3.0に対応する臭気濃度は、概ね30(臭気指数14)
臭気強度3.5に対応する臭気濃度は、概ね70(臭気指数18)