お酒の香りの秘密

年末年始やお盆など、久しぶりに親戚や友人と集まると、ついついお酒が進んでしまいますよね。他の人が飲んでいるお酒の香りに刺激を受けて、普段は余り手を伸ばさない種類にまでチャレンジしてしまう方もいるでしょう。
しかし、最近の研究によって、私たちが「いい香り」と感じているものの中に、意外な事実が隠れていることが分かりました。今回は、最新の蒸留酒の研究データから、私たちが向き合う脱臭の現場にも通じる、においの不思議な真実を解き明かします。

研究では、芋焼酎、泡盛、ブランデー、ウイスキーという、原料も製法も全く異なる4つの蒸留酒の香りを精密に分析しました。驚くべきことに、これら4種類のお酒に含まれる香気成分は、ほぼ同じ種類であることが分かりました。特に、各お酒の個性を決定づけているのは、主に次の6つの成分の「バランス(香気強度)」の違いです。

心地よい4つの香り・・・バラのような華やかさ、フルーティーな果実感、甘いバニラの余韻、そして華やかなアクセント 
不快な2つのにおい・・・ 少し嫌なにおい、汗臭いにおい

え?と思いましたよね。お酒のいい香りには、「単体では不快なにおい」が含まれているのです。さらに驚くことに、研究チームがいい香りの成分だけを混ぜて模擬溶液を作ってみても、本物のお酒の香りは再現ができませんでした。そこに、単体では不快なにおいを適切なバランスで加えることで、初めてそのお酒らしい深みや特徴的な香りが生まれるのです 。


このことは、私たちが行う排気脱臭・悪臭対策においても、重要なポイントです。
特定の成分をゼロにするだけが、正解ではありません。1つの成分が無くなったことによってバランスが崩れ、他の悪臭成分が際立つようになった、なんてことも起こります。
また、においの強さは単純な濃度だけで測ることはできません。微量でも強烈に感じる悪臭成分があれば、コントロールが必要です。

「いい香り」と「嫌なにおい」は、実は紙一重のバランスの上に成り立っています。お酒の世界が教えてくれるように、本来は不快なはずの成分も、適切にコントロールされれば「深み」を生む隠し味に変わるのです。

そのため、私たち脱臭・悪臭対策の現場でも、単に「成分を減らす」こと以上に、「人がどう感じるか?」という感覚の壁に直面することが少なくありません。数値だけでは測れない“においの不思議”にお困りの際は、ぜひ一度プロの視点をご活用ください。

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参考文献
松原英隆, 今村弥生, 原かす美, 浦野紘平『芋焼酎, 泡盛, ブランデー, ウイスキーの香りに寄与する成分の解析』におい・かおり環境学会誌 (2024)