先日、近くに行く用事があったため、早朝実家に顔を出した。
昔から変わらない風景がそこにはあった。ふと廊下の隅に目をやると、
15L程はあるであろう半透明の漬物樽が静かにたたずんでいた。
透けて見える色からすると、梅と紫蘇を漬けているのだろう。
父は、昔から毎年梅干しをつけていた。この時期に電話をかけると、
今年の梅は小さかった、今年は大きかったと、嬉々として話してきた。

まだ予定には早い時間だったため、久しぶりに実家で朝食によばれた。
案の定、父が子供のような表情で嬉しそうに自分で漬けた梅と紫蘇を食卓に並べ
食べろ食べろと勧めてきた。母は無理強いはしないでと止めはしたが、 
久しぶりに父の紫蘇を食べたかったので、手を伸ばした。
昔と変わらない懐かしい香りと味を堪能し、たわいもない会話をしながら
穏やかな朝食の時間を過ごしていた。

朝食も終わりに近づいたとき、ふと父がつぶやいた
「 父さん、梅、食べへんねん 」
ハッとして父の顔を見ると、2本にまで減った歯を見せながら子供のように笑っていた。