においの感じ方

「嗅覚について」で、ヒトの鼻がどのようににおいを感じ取っているのか、複雑な仕組みをご紹介しました。

鼻の仕組みは同じでも、そのにおいを感じるかどうか、また、そのにおいに対してどんな感情を持つかは人それぞれです。

皆さん、こんな経験はありませんか?
自分は「くさい」と感じるのに、同じ空間にいる他の人は何のにおいも感じていない。

においの物質は同じでも、人によって感じ方はさまざまです。
感じ方の違いについて、下記のようなことが研究されています。

・年齢
60歳以上の人と、60歳未満の人たちを比較した研究で、60歳以上の人は、高い濃度でないとにおいの有無を判別しにくいことが分かっています。
嗅覚も他の感覚と同じく、その能力は加齢と共に低下することは事実ですが、老眼や耳が遠くなる現象ほどには自覚がなく、あまり不便も感じていないのが実情です。


・男女
女性が男性よりもにおいに敏感であるという報告が多くあります。しかし、男女で差はない、または男性の方が敏感であるという報告も少ないですが皆無ではないため、感度に性差があるというよりは、女性のほうがにおいに対する関心が高いことが影響していることが考えられます。
また、女性ホルモンも嗅覚に影響を与えていると言われています。性ホルモンが嗅覚の感受性に直接影響したというよりは、月経周期による注意の変動が影響していると考えられます。


・喫煙
喫煙者は、非喫煙者と比べてにおいを弱く感じるという報告があります。
しかし、何のにおいなのかを当てる能力(においの同定能力)は、喫煙による差はないことが分かっています。


また、同じ人でも、その日の体調や、時間帯、時期によっても感じ方に変動があります。

嗅覚について、たくさんの研究がされてきていますが、まだまだ解明されていない不思議がたくさんあります。
近年は、AIを活用した嗅覚センサーまで登場しています。
これまで職人の嗅覚に頼ってきた製造現場で嗅覚のデジタル化や、医療現場にて息のにおいからがんを早期発見するなど、さまざま場所での活用が期待されているようです。

今後の研究結果が楽しみですね!