中村勝太 「大往生」

先日101歳になる祖母が天寿を全うしました。

私の祖母は100歳になった頃から特別養護老人ホームに入居しており、環境の変化に身体がついていかなかったのかもしれません。
入居前は100歳にも関わらず、自分で買い物に出かけたりもしたりと身の回りの事はすべて自分でするくらい元気でした。

祖母が入居してから、何度かお見舞いにいった際に祖母は毎回口癖のように、「早く死にたい」と言っていました。

理由としては、入居してからというもの、身の回りの事もすべて職員の方にやってもらっており、移動も車椅子でしたので、人様の迷惑になってまで生き続けたくないとの事でした。

その言葉を聞く度に私は、孫に死にたいなんて言うなと強く言っておりましたが、その甲斐なく祖母は逝ってしまいました。

祖母の死は何の前触れもなく訪れ、祖母が急逝した日も30分程前まで息子である私の父と元気に会話していたそうです。

父がお見舞いの帰り道に、最寄駅から自転車に乗ろうと鍵を取り出した際、鍵につけていたストラップが突然切れたそうです。

嫌な予感がした父は、施設に戻ろうかと思っている矢先に携帯電話がなり、祖母が亡くなったとの連絡を受け取ったそうです。

祖母は何の苦しみもなく眠るように亡くなったとの事で、死に顔も非常に安らかなものでした。

祖母の亡骸を前に私は悲しみよりも、ばあちゃんがやっと天国に行けたと感じ、不思議と涙は出ませんでした。
大正時代から生きてきた祖母の長い人生は、大往生という言葉がふさわしいと思います。
生前祖母は「やりたいことは全部やった、後は死ぬだけ」と言っておりましたので、何の悔いも残していないでしょう。

私も祖母のような人生を全うできるでしょうか?
まだまだ30年ちょっとの人生ですが、最後の時に「やりたいことは全部やった」と言える人生にしたいと思います。

ばあちゃんお疲れ様でした。